だしの知識

和食の基本「だし」は、素材の旨味をお湯や水に浸して出たスープです。
「だし」と言っても、魚介系、肉系、野菜系と様々あり、現代ではミックスして複雑な旨味を持つ合わせだしもあります。
魚介系だしの代表格である「かつお節」や「いわし節」を中心に、和食を支えるだしについて“だしの学校”の基本的な知識を得て、毎日の食卓に活かしてください。

だしの知識

削り節の地域性

私たち日本人の食卓に必要不可欠な削り節。
原料産地として、加工地として、そして消費地として、様々な立場の地域が日本中にあります。
原料の産地としては、魚類は九州・四国、昆布は北海道が中心とされ、そこで作られた節が静岡県を中心とした加工地に運ばれ、商品になって販売されます。
だしの学校本部がある静岡県は、駿河湾に面した「削り節」の加工地(産地)です。
その中でも焼津を筆頭にかつお節の文化が根強いのですが、蒲原では西尾商店が削り機を導入したことにより、いわし削りの産業が町の基盤となりました。
一方で、消費量として見ると沖縄県が全国一。江戸時代から、中国への輸出港だったこともあり、食文化に根付いています。
沖縄そばのだしはかつお節です。

削り節の地域性
北海道
昆布の産地:羅臼昆布、利尻昆布、日高昆布、真昆布
静岡県焼津・御前崎
主な生産品:かつお節、まぐろ節、さば節
生産量:全国第2位
高知県土佐清水市
主な生産品:かつお節、さば節、宗田節
生産量:土佐の宗田節はブランド品として有名で、生産量全国第1位
長崎県、熊本県牛深
主な生産品:煮干し、さば節
生産量:長崎県は煮干し生産量全国第1位
鹿児島県枕崎・山川
主な生産品:かつお節、さば節、宗田節
生産量:かつお節(本節)の生産量は全国第1位

削り節の形と用途 かつお節

「かつお節」は鰹を「煮る」→「燻す」→「乾燥」の手順で作られ、世界で最も堅い食べ物としても知られています。
独特の旨味や香りは「イノシン酸」によって生まれます。その成分量は生の鰹の数十倍。
まさに旨味のカタマリとも言えます。

厚削り、破砕

厚削り、破砕

形:厚さ0.7mmの肉厚な削り節。
用途:麺類の本格的な濃く力強いだしを取る。
そば屋で専門に使われている。

うす削り(本枯節・花かつお)

うす削り(本枯節・花かつお)

形:厚さ0.01mm~0.03mm程の透き通った削り節。
用途:お吸い物、トッピング等、澄んだだしを取る。

パウダー

パウダー

形:削り節をサラサラのパウダー状に細かくしたもの。 用途:お味噌汁、スープ、だし巻き玉子、煮物等、 濾す必要がなくサッと本格だしを取る。

伝統のかつお節 「手火山式焙乾法」

伝統のかつお節 「手火山式焙乾法」

かつお節の独特の香りと味を造り出すとても重要な「燻し(いぶし)」の工程において、江戸時代以来、一番の方法であると認められた焙乾法が「手火山式」です。
「手火山式」とは機械製造のかつお節とは違い、非常に強い火を使って手作業で燻し乾燥させる原始的な製造方法です。約1ヵ月もの期間、職人が火の具合を確認しながらじっくりと燻される「手火山式かつお節」は、職人が体を張って手間暇かけて作るため今ではほんの数社しか作っておらず、「幻のかつお節」と呼ばれています。
しかし幻と言うだけあり、その強い燻しの香りとギュッと凝縮されたかつおのうま味は、他の追従を許すことのない高品質となっていて、大手ブランドや有名料亭、流行りの麺屋など多方面で引く手あまたの商品となっています。
だしの学校・西尾商店はこの「手火山式」を永く取り扱い、職人との厚い信頼で結ばれています。

削り節の形と用途 いわし節

静岡市清水区蒲原の特産品。
主に九州長崎産の良質な油の少ない片口いわし、ウルメいわしを削って作られます。
濃厚な味と、苦味のないすっきりした旨みが特長的。
蒲原町特産の「いわしの削り節」(蒲原では「削りっこ」と呼んでいる)は旨味が非常に強く、かつお節以上とも言われています。

いわしのDHA・EPA…よく聞くけれど何ですか?

いわしのDHA・EPA…よく聞くけれど何ですか?

いわしが栄養価の高い魚であることはすでにご存知だと思いますが、青魚の中で最も多くドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)を含んでいるのが、いわしです。いわしに含まれる油分は、中性脂肪・悪玉コレステロールを低下させて、万病の元、動脈硬化を予防するとも言われています。さらに、いわしの栄養はDHA、EPAだけではなくミネラルも豊富です。カルシウムと、そのカルシウムの吸収を助けるビタミンDが両方含まれ、いわし一つ食べるだけでたくさんの栄養があなたの強い味方になります。

DHA(ドコサヘキサエン酸):体に必須の脂肪酸(栄養素)
EPA(エイコサペンタエン酸):体内では作ることのできない非常に有用な栄養

いわし削り節の始まり

1906年(明治39年)静岡県庵原郡岩渕村(現:富士市岩淵)の西尾栄太郎(西尾商店の初代)、蒲原の大岩妙太郎と久保田虎松らが、このあたり一帯で削り節業を始めました。
その頃、焼津では一足先に花かつおの生産が始まっていましたが、当時は鰹節の値段が高く、祝儀用で用いられるくらいで一般庶民が日常的に使うまでは至りませんでした。
そこで、西尾栄太郎は「庶民でも気軽に購入でき、美味しく食べられる、削り節を開発したい」と思い、比較的安価で栄養源が豊富ないわしに注目。
試験的に町内でいわしの削り節を売りだすと、美味しいとの声があがり瞬く間に大人気商品となったのです。
手軽に買えて、贅沢に使用できる美味しいいわしの削り節は、庶民の間で大変人気となり、そこから蒲原ではいわしの削り節が特産品となりました。

味をまとめる 昆布だし

昆布の産地は北海道です。北前船で日本海を渡って京都に運ばれたことにより、京料理では昆布だしが多く使われました。
昆布のうま味は「グルタミン酸」によって生まれます。昆布は他のだし成分との相乗効果が出しやすいため、かつお節や煮干しとミックスして使用されることも多くあります。まさに味のまとめ役と言ったところです。

日高昆布

日高昆布

繊維質で煮込みやすい昆布です。
昆布巻き、佃煮、おでんなどにも使われます。

羅臼昆布

羅臼昆布

昆布の王様と呼ばれ、濃厚なだしを取ることができます。肉厚なため、そのまま食べる昆布料理の食材としても使われています。

利尻昆布

利尻昆布

味と香りが高いだしを取ることができます。湯豆腐や千枚漬けなど、京料理との相性がとても良い昆布です。

昆布の保存法

昆布の姿を見ると、『こんな大きなもの、どうやって保存するの?』と悩んでしまいますね。
昆布の保存で一番注意するのは“湿気”です。容器に昆布を移して乾燥材を入れれば常温で保存することができます。
冷蔵庫には入れないようにしましょう。

続きは講座当日に配布します。

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